永瀬隼介『19歳』を読む

後半、著者がフィリピン取材するところはあんまり必要無いと思ったのと、死刑判決を受けた後の関光彦の心理や犯行内容に対する反省態度が著者には全くもって理解不能であるらしく、内奥に進みきれずに結局そこで終わってしまうのが欠点。前半の関の半生や家族との関係は面白い。犯行の描写は恐怖。人ってこうやって転落していくんだという、転落の記録でもある。
中学生あたりからダメさ加減が加速されていくのだが、付き合ってた彼女と別れさせられてしまい、彼女の家にナイフを持って怒鳴りつけにいくあたりはDQNの度合いが全開になっている。母親と弟への家庭内暴力も半端じゃないので別居することになる。母親が引越し費用などを負担したりしていたりするが、たまに実家に寄りついていたりもする。
事件後、母親や弟は拘置所に面会に来ていたりするので完全な一家離散という状態ではない。ただし膨大な借金を作って一家の転落の原因になった父親に対しては強い敵意を示していて、一緒に暮らしていた小学生までの間の虐待気味の経験が強く印象に残っているらしい。
関本人は漠然と19歳の少年だから死刑は免れると思っていたらしい。もちろん犯行当時そう計算しながら4人を殺害し強姦を続けていたかは不明。ただし20歳と19歳では行動様式が変わると認識している。関の周囲の連中がそうだったので、20歳だったらそのような犯行にストップがかかっていたかもしれないと。でも19歳なので死刑は逃れられない。あまりにもDQNだ。
関は今33歳か34歳くらい。チマーとかB-Boyとか暴走族とかのジャンルの差異がわかる世代だ。薬もやっていたし、殆どジャンキー状態の犯行なのでは?と思わせるのだがそこらへんの有無は書かれていない。
また一家4人殺害され、一人生き延びた長女は犯行半月前くらいに関に強姦されていて、住所や電話番号などの個人情報を盗まれているのだが警察に被害届けを出した形跡等はない。


酒鬼薔薇事件あたりから始まるのは、犯行単位が小粒で典型的な不良ではなく、初犯でいきなり凶悪犯罪とかやっちゃうんで世間的にはショック大ていう感じなんだろうけど、関はいわゆる典型的な不良でDQNで堕ちるべくして堕ちていった感じだ。もう関のよな環境下で犯行予備軍化していってる子って消滅していっていると信じたい。また少年犯罪は基本的に早期に足がつく。いくら凶悪化しても犯行内容の知的レベルが上がることはないし、そこがまた切ない。